「どんな原稿を読めばいい?」「30秒と60秒のどちらがいい?」「録音した音声はMP3で提出して大丈夫?」など、初めてのボイスサンプル作りでは迷うことがたくさんあります。
ボイスサンプルは、きれいな声を聞かせるだけのものではありません。アニメのオーディションなら演技の幅、ナレーション案件なら聞きやすさなど、届ける相手によって見せたいポイントが変わります。
この記事では、アニメ・ゲーム・企業ナレーション・CM・朗読に使えるオリジナル原稿例と、30秒・60秒・90秒の構成を紹介します。録音後のファイル形式や音量、ファイル名、提出前の確認方法まで順番に見ていきましょう。
ボイスサンプルを作る前に用途を決めよう

ボイスサンプルを作るときは、最初に「誰に聞いてもらうのか」「どのような仕事につなげたいのか」を決めましょう。
オーディションに提出する音声と、個人サイトに掲載する営業用の音声では、求められる長さや内容が異なります。まずは、次の表を参考に用途を整理してみてください。
| 用途 | 聞かれるポイント | 作り方の方向性 |
| オーディション | 課題への対応力、演技、滑舌 | 指定原稿・時間・形式を最優先する |
| 事務所プロフィール | 声質、得意な役柄、演技の幅 | 得意なジャンルを最初に入れる |
| ゲーム・アニメ案件 | キャラクター性、感情の変化 | 年齢や性格の違うセリフを収録する |
| ナレーション案件 | 聞きやすさ、信頼感、情報の伝わり方 | 企業・CM・ドキュメンタリーなどに分ける |
| 個人サイト・営業資料 | 対応できる仕事の種類 | ジャンル別にファイルを分ける |
提出先に指定原稿や制限時間がある場合は、この記事の構成例よりも募集要項を優先してください。
自由原稿の場合も、アニメ向けのセリフと企業ナレーションを無理に1本へ詰め込む必要はありません。「アニメ・ゲーム用」「ナレーション用」のように分けたほうが、聞く側にも得意分野が伝わりやすくなります。
何を入れるか迷った場合は、これから挑戦したい仕事をひとつ選び、その仕事で求められそうな声や読み方から原稿を決めてみましょう。
ボイスサンプルの長さと構成の決め方

ボイスサンプルは、長ければ魅力が伝わるわけではありません。一方で、短すぎると演技や読み方の違いを見せにくくなります。提出先から長さを指定されている場合はその時間に合わせ、指定がない場合は用途に応じて30秒・60秒・90秒から選びましょう。
30秒・60秒・90秒はどう使い分ける?
指定がない場合は、聞いてもらいたい内容の量に合わせて長さを選びます。
| 長さ | 向いている用途 | 入れる内容 |
| 30秒 | 応募フォーム、短い営業資料 | 最も得意な原稿を1本 |
| 60秒 | 事務所プロフィール、営業用 | 違いが伝わる原稿を2本 |
| 90秒 | 複数の表現をまとめたい場合 | 20秒前後の原稿を3~4本 |
30秒のボイスサンプルでは、いちばん得意な声や読み方をひとつに絞りましょう。短い時間に多くのキャラクターを入れるよりも、「この役なら任せられそう」と感じてもらえる原稿を丁寧に演じたほうが魅力を伝えやすくなります。
60秒の場合は、落ち着いたナレーションと明るいセリフなど、違いが分かる2種類を入れやすくなります。ただし、声色だけを大きく変えるのではなく、役柄や話す相手、感情の違いが伝わる組み合わせを意識しましょう。
90秒では複数の表現を聞かせられます。アニメ、ゲーム、ナレーションなどをまとめることもできますが、用途が大きく異なる場合は、無理に1本へまとめずファイルを分ける方法もあります。
長さは合否を決める共通基準ではありません。募集要項に「60秒以内」「指定原稿をすべて収録」などの条件がある場合は、必ずその指示に合わせてください。
30秒・60秒・90秒の具体的な構成例
収録する原稿が決まったら、それぞれの長さに合わせて時間を配分します。
| 長さ | 構成例 |
| 30秒 | 冒頭の余白1秒→得意な原稿約27秒→終わりの余白2秒 |
| 60秒 | 原稿A約27秒→間2秒→原稿B約29秒→終わりの余白2秒 |
| 90秒 | 20秒前後の原稿を3~4本収録し、原稿間に1~2秒の間を入れる |
名乗りは必ず入れるものではありません。「最初に氏名を入れてください」などの指定がある場合だけ収録しましょう。
複数の原稿を入れる場合は、最も聞いてほしい原稿を最初に配置します。最初の数秒で自分の得意な声や読み方が伝わる構成にすると、短時間でも印象を残しやすくなります。
原稿と原稿の間には、1~2秒程度の間を入れます。間が短すぎると慌ただしく聞こえ、長すぎると音声が終わったように感じられます。実際に再生しながら調整してみてください。
読み上げ時間は、文字数だけでは決まりません。感情を込めるセリフや朗読は間が長くなりやすいため、原稿を声に出してから構成を決めましょう。
ボイスサンプルの構成を決める3つのポイント
ボイスサンプルの構成を決めるときは、次の3つを意識しましょう。
1つ目は、最も得意な原稿を最初に入れることです。最後まで聞いてもらうことを前提にせず、前半だけでも自分の強みが伝わる構成にします。
2つ目は、似た声や役柄を続けすぎないことです。明るい主人公と落ち着いた大人、ストレートナレーションとCMナレーションなど、聞いたときに違いが分かる組み合わせにしましょう。
3つ目は、ひとつのファイルに多くのジャンルを詰め込みすぎないことです。アニメ用、ゲーム用、ナレーション用のように分けると、聞く側が必要な音声を選びやすくなります。
声の種類を増やすことだけが、演技の幅ではありません。同じ声質でも、話す相手や場面、感情の変化が伝われば、異なる役柄として聞かせることができます。
ボイスサンプルを自宅で録るための環境と機材

ボイスサンプルでは、演技や読み方だけでなく、声が聞き取りやすく録音されているかも確認されます。高価なマイクを購入しても、部屋の反響やエアコンの音が大きければ、声の魅力が伝わりにくくなります。機材だけでなく、録音する場所も一緒に整えていきましょう。
自宅録音で用意したい機材
自宅でボイスサンプルを録音する場合は、マイク、マイクスタンド、ポップガード、ヘッドホン、録音ソフトを用意します。
| 機材 | 主な役割 |
| マイク | 声を録音する |
| マイクスタンド | マイクと口の距離を安定させる |
| ポップガード | 「ぱ」「ば」などの破裂音を抑える |
| ヘッドホン | ノイズや音割れを確認する |
| オーディオインターフェース | XLRマイクとパソコンを接続する |
| 録音・編集ソフト | 録音、カット、音量調整、書き出しを行う |
静かで反響の少ない部屋では、細かな声の表情を拾いやすいコンデンサーマイクが使いやすいでしょう。一方で、生活音や部屋の反響が入りやすい環境では、口元の音を拾いやすい単一指向性のダイナミックマイクが合うこともあります。
USBマイクなら、基本的にパソコンへ直接接続できます。XLR接続のマイクを使用する場合は、別途オーディオインターフェースが必要です。
マイクは価格だけで選ばず、実際に録音して「声よりも部屋の響きが目立っていないか」「サーッというノイズが入り続けていないか」を確認しましょう。
スマートフォンも、原稿の長さや演技を確認する用途には使えます。まずスマートフォンでテスト録音し、原稿や読み方を整えてから本番の収録をする方法もあります。
自宅録音とスタジオ録音の違い
| 項目 | 自宅録音 | スタジオ録音 |
| 費用 | 機材購入後は抑えやすい | 利用するたびに料金がかかる |
| 録り直し | 好きな時間にできる | 予約時間内に行う必要がある |
| 音質 | 部屋や機材の影響を受ける | 防音・吸音された環境で録りやすい |
| サポート | 自分で録音・編集する | エンジニアに相談できる場合がある |
| 向いている用途 | 練習、短い応募音声、宅録案件 | 事務所プロフィール、長く使う営業音声 |
自宅録音では、原稿を変えたり、演技の方向性を試したりしながら何度でも録り直せます。今後、宅録案件へ応募したい場合は、自分で録音から編集まで行う練習にもなります。
スタジオ録音は、防音や吸音が整った環境で収録できるのがメリットです。ただし、スタジオによってはエンジニア代や編集料金が別途必要になるため、予約前に確認しましょう。
自宅で原稿や演技を十分に練習し、本番だけスタジオで収録する方法もあります。限られた収録時間を有効に使いやすく、録り直しによる追加費用も抑えられます。
録音時のノイズ対策と音量設定
録音前に、エアコン、空気清浄機、パソコンのファン、冷蔵庫、外の交通音などを確認します。短いテスト音声を録り、ヘッドホンで聞いてみましょう。カーテン、布団、吸音材などを使うと、壁や床から返ってくる音を抑えやすくなります。ただし、マイクの周囲を布で完全に囲うと声がこもることもあるため、録音した音を聞きながら調整してください。
マイクは、口から15~20cm程度離した位置を出発点にします。息が直接当たらないように少し角度をずらし、ポップガードを使用しましょう。マイクとの距離が毎回変わると音量や音質も変わるため、マイクスタンドを使って位置を固定します。
録音時は、大きなセリフを読んだときのピークが、おおむね−12~−6dBFSに収まるように調整します。0dBFSに到達すると音割れするため、少し余裕を残して録音しましょう。録音後のノイズ除去は便利ですが、強くかけすぎると声が金属的に聞こえたり、息遣いが不自然に途切れたりします。編集だけで直そうとせず、まずは録音環境を整えることが大切です。
用途別に使えるボイスサンプルのオリジナル原稿例

ボイスサンプルの原稿は、声色の違いを見せるためだけに選ぶのではなく、自分が受けたい仕事に合わせて選びましょう。アニメやゲームの仕事を目指すなら、人物の年齢、性格、場面が想像できるセリフが向いています。ナレーションの仕事を目指すなら、情報の伝え方や商品の魅力を自然に表現できる原稿を選びます。
原稿を決めるときは、「誰が」「誰に」「どこで」「何のために話しているか」を考えてみてください。同じ言葉でも、話す相手や目的が変われば、声の距離感や間の取り方も変わります。
以下は、この記事のために作成したオリジナル原稿です。読み上げ時間は話す速さによって変わるため、録音前に必ず時間を計測しましょう。
アニメ向けのオリジナル原稿例
<原稿例1:明るく前向きな主人公>
想定時間:約20秒
待って! ここで諦めたら、昨日まで頑張った意味がないよ。怖いのは私も同じ。でも、みんなと一緒なら、あと一歩だけ進める。だから今度は、私が先に行くね。
読み方のポイント:前半は相手を引き止める強さを出し、後半では自分も怖いことを打ち明けます。最初から最後まで元気に読むのではなく、途中で気持ちが変わる様子を表現してみましょう。
<原稿例2:落ち着いた大人>
想定時間:約20秒
おかえり。ずいぶん遅かったね。心配なんてしていないよ。ただ、君が戻らないと、この紅茶が少し苦くなる。それだけさ。……ほら、冷める前に座って。
読み方のポイント:心配していたことを素直に言えない人物を想定します。声を低くすることだけに頼らず、短い間や語尾の柔らかさで関係性を伝えてください。
<原稿例3:余裕のあるライバル>
想定時間:約18秒
その程度で勝ったつもり? 悪いけど、ここまでは予定どおりだよ。本気の勝負は、むしろこれから。君がどこまでついてこられるか、少しだけ楽しみになってきた。
読み方のポイント:大声で威圧するのではなく、相手より優位に立っている余裕を意識します。最後の一文では、相手への興味が少し生まれた変化を見せましょう。
ゲーム向けのオリジナル原稿例
<原稿例1:戦闘中の指揮官>
想定時間:約18秒
北門が破られた! 弓隊は高台へ、回復役は負傷者の後送を。私はここで時間を稼ぐ。合図が聞こえたら振り返らず走れ。大丈夫、必ず追いつく!
読み方のポイント:緊迫した場面でも、指示が聞き取れる速さを保ちます。前半は指揮官として明確に指示し、最後は仲間を安心させる気持ちを込めてください。
<原稿例2:物語を案内する村人>
想定時間:約20秒
旅人さん、この森で青い光を見ても近づいちゃだめだよ。あれは出口じゃなくて、昔の記憶に迷い込む入口なんだ。帰りたければ、川の音を右手に進んで。
読み方のポイント:ゲーム内でプレイヤーに情報を渡す場面を想定します。不思議な世界観を出しながらも、進み方の説明が聞き取りにくくならないようにしましょう。
<原稿例3:短いバトルボイス>
想定時間:約10秒
準備はできてる? それじゃあ、一気に決めよう! ここで終わりだ!
読み方のポイント:攻撃前、必殺技、勝利のセリフとして分けて録音しても構いません。短いセリフでも、誰と戦っているのかを想像して演じてください。
企業ナレーション向けのオリジナル原稿例
<原稿例1:Webサービス紹介>
想定時間:約18秒
申請、承認、集計をひとつの画面に。クラウド型の業務管理サービスなら、毎日の定型作業を減らし、チームの時間をもっと大切な仕事に使えます。
読み方のポイント:明るさよりも、情報が一度で伝わる読み方を優先します。「申請、承認、集計」は、言葉同士がつながらないように区切りましょう。
<原稿例2:企業紹介>
想定時間:約18秒
私たちは、地域で暮らす一人ひとりの声に耳を傾け、新しい技術と確かな品質で、これからの暮らしを支えるサービスをつくり続けます。
読み方のポイント:企業の姿勢を伝えるため、落ち着きと信頼感を意識します。重くなりすぎないよう、後半へ向かって少し前向きな印象を加えてください。
<原稿例3:研修・eラーニング>
想定時間:約20秒
情報セキュリティは、特別な人だけの仕事ではありません。不審なメールを開かない、パスワードを使い回さない。日々の小さな確認が、大切な情報を守ります。
読み方のポイント:内容を正しく理解してもらうことを優先します。注意を促す部分は強くしすぎず、落ち着いた速度ではっきり読みましょう。
CM向けのオリジナル原稿例
*以下の商品名・サービス名は、原稿例のために作成した架空の名称です。
<原稿例1:炭酸飲料CM>
想定時間:約15秒
朝の空気に、しゅわっと弾ける柑橘の香り。甘さすっきり、気分は軽やか。今日のスタートに、果実炭酸「ソラシトラス」。
読み方のポイント:柑橘の爽やかさと炭酸の軽さが伝わるように、テンポよく読みます。商品名は急がず、聞き手が覚えやすいように少し丁寧に発音してください。
<原稿例2:スキンケアCM>
想定時間:約18秒
忙しい夜こそ、肌にもひと息。とろけるようになじんで、うるおいを包み込む。眠る前の30秒を、自分をいたわる時間へ。「月灯りナイトクリーム」。
読み方のポイント:全体を静かに読むだけでなく、「自分をいたわる時間へ」の部分に優しさを加えます。声量を落としすぎて聞き取りにくくならないように注意しましょう。
<原稿例3:キャンペーン告知>
想定時間:約15秒
今だけの特別な出会いを、もっと身近に。対象商品を2点購入すると、オリジナルグッズをプレゼント。数量限定のため、お早めにお申し込みください。
読み方のポイント:「対象商品を2点」「数量限定」などの条件が聞き取れるように読みます。勢いだけで押し切らず、情報とワクワク感の両方を意識してください。
朗読向けのオリジナル原稿例
<原稿例1:冒険物語>
想定時間:約20秒
雨が上がると、商店街の石畳は小さな鏡になった。少年は水たまりをひとつずつ避けながら、ポケットの鍵を握りしめる。今日こそ、あの古い扉を開けるのだ。
読み方のポイント:読み手が目立つのではなく、雨上がりの商店街や少年の動きが浮かぶように読みます。最後の一文では、物語が動き出す期待感を加えましょう。
<原稿例2:静かな回想>
想定時間:約20秒
祖母の手紙には、たった一行だけ書かれていた。「桜が咲いたら、駅の時計の下へ」。春を三度見送った朝、私はようやく、あの日の約束を思い出した。
読み方のポイント:全体を悲しそうに読むのではなく、手紙を見つけたときの驚きや懐かしさを想像します。文章の意味に合わせて、間の長さを変えてください。
<原稿例3:子ども向け作品>
想定時間:約20秒
小さなクジラのルルは、まだ海の外を見たことがありません。ある朝、波の向こうに虹色の鳥を見つけると、初めて家族のそばを離れて泳ぎ出しました。
読み方のポイント:子どもにも場面が伝わるように、言葉を急がず明るく読みます。幼すぎる話し方にせず、物語の続きが気になる雰囲気をつくりましょう。
いかがでしたでしょうか?原稿をそのまま読むだけでなく、人物の年齢、話す相手、場面などを変えて、自分の声に合う形を探してみてください。ただし、アニメやゲーム、小説、CMなど、既存作品の文章を無断でボイスサンプルに使用するのは避けましょう。自作原稿、応募先から配布された課題原稿、利用許諾を確認できる原稿を使うと安心です。
ボイスサンプルの録り方と編集手順

原稿と構成が決まったら、録音の準備を始めます。一度で完璧に読もうとせず、同じ原稿を複数回録音しておきましょう。録音後に聞き比べると、収録中には気づかなかった早口や不自然な間を見つけやすくなります。
ここからは、録音前、録音中、録音後の順番で確認するポイントを紹介します。
録音前に確認したいチェックリスト
録音ボタンを押す前に、機材や環境、原稿の状態を確認します。
- マイクと録音ソフトが正常に動く
- エアコンやPCファンの音が入っていない
- 部屋の反響が強すぎない
- 大きな声でも音割れしない
- 原稿を声に出して読み、時間を確認した
- 固有名詞やアクセントを確認した
- 水分補給を済ませた
- テスト音声をヘッドホンで確認した
- 録音データの保存場所を決めた
特に確認したいのが、テスト音声です。録音画面の波形を見るだけで判断せず、実際にヘッドホンで再生してください。ノイズや音割れを見つけた場合は、長い原稿を録り終えてから直すのではなく、録音前にマイクの位置や入力レベルを調整しましょう。
録音中に意識したい発声と演技のポイント
録音中は、姿勢や滑舌だけでなく、「誰に向かって話しているか」を意識します。同じ文章でも、親しい友人へ話す場合と、大勢の人へ呼びかける場合では、声の距離感や息の使い方が変わります。声色を大きく変えることより、場面や相手が想像できる自然な表現を目指しましょう。
原稿を最初から最後まで同じテンションで読まず、気持ちが変わる場所を見つけてください。驚き、迷い、決意などの変化が入ると、短いボイスサンプルでも演技の幅を伝えやすくなります。
一発で完成させようとせず、落ち着いた読み方、少し明るい読み方、テンポを上げた読み方など、方向性を変えて複数のテイクを録音しておくと選びやすくなります。読み間違えた場合は、単語だけを細かく録り直すのではなく、文章や段落単位で録り直しましょう。細かくつなぎ合わせすぎると、声のトーンや息の流れが不自然になりやすいためです。
録音後の編集で押さえたいポイント
録音後は、最初に複数のテイクから使用する部分を選びます。そのあと、不要な無音や言い直しをカットし、目立つノイズや音量差を整えましょう。
編集は、次の順番で進めると迷いにくくなります。
- 使用するテイクを選ぶ
- 言い直しや長すぎる無音をカットする
- 目立つノイズやクリック音を整える
- 原稿ごとの音量差をそろえる
- 必要に応じてEQやコンプレッサーを軽く使う
- 編集用のWAVデータを保存する
- 提出形式に書き出して再生する
ノイズ除去やコンプレッサーを強くかけすぎると、声が不自然になったり、息遣いが途切れたりすることがあります。加工前の音源を残し、聞き比べながら調整しましょう。
また、カットした部分の語頭や語尾が欠けていないかも確認してください。「こんにちは」の最初の音や、文章の最後の余韻が切れていると、不自然に聞こえます。
ボイスサンプルでは、声そのものを確認してもらうため、BGMや効果音は入れないのが無難です。提出先から指定がある場合や、利用許諾を確認できる音源を使う場合を除き、声だけで仕上げましょう。
ボイスサンプルのファイル形式・音量・ファイル名

音声の編集が終わったら、提出用のファイルを書き出します。録音や演技がよくても、指定と異なる形式で提出したり、ファイル名から誰の音声か分からなかったりすると、確認に手間がかかります。募集要項を確認したうえで、提出しやすいデータに整えましょう。
ボイスサンプルのファイル形式
ファイル形式は、提出先やクライアントから指定されたものを最優先します。指定がない場合は、以下をひとつの目安にしてください。
| データ | 形式の例 | 用途 |
| 編集用マスター | WAV・48kHz・24bit・モノラル | 再編集できる元データとして保存 |
| 提出用 | MP3・192~320kbps・モノラル | 容量を抑えて提出する場合 |
| BGM入り | WAVまたはMP3・ステレオ | BGMの使用が認められている場合 |
WAVは音質を保ちやすい一方で、ファイル容量が大きくなります。MP3は容量を抑えやすく、Webフォームやメールで提出するときに使いやすい形式です。
ただし、「ボイスサンプルは必ずMP3」と決まっているわけではありません。81プロデュースのオーディションでは、MP3を推奨しながら、容量によってはM4A・AAC・WAVも受け付ける募集例があります。
応募先によって、ファイル形式、容量、提出本数、指定原稿をひとつにまとめるかどうかが異なります。書き出す前に募集要項を確認してください。
ボイスサンプルの音量
声が小さすぎると聞き取りにくくなりますが、音量を上げすぎると音割れが起こります。提出先から指定がない場合は、以下を調整の出発点にしてください。
| 確認項目 | 指定がない場合の目安 |
| 録音時のピーク | −12~−6dBFS程度 |
| 完成ファイルのピーク | −3~−1dBFS程度 |
| 声だけの平均的な音量 | −20~−16LUFS程度 |
| クリッピング | 0dBFSに到達させない |
これらの数値は、ボイスサンプルの合否を決める共通規格ではありません。提出先から音量やラウドネスを指定されている場合は、その数値を優先してください。
数値を合わせることだけに集中せず、原稿ごとの音量差、声の歪み、常に聞こえる環境音がないかも確認しましょう。
参考:Adobe「音声レベルのモニタリング」、Adobe「ポッドキャストの作成」、Audacity「Normalize」
ボイスサンプルのファイル名
ファイル名には、氏名、ジャンル、長さ、作成日を入れると、受け取った側が内容を判断しやすくなります。
ファイル名の例は以下のとおりです。
- yamada_hana_anime_60s_20260903.mp3
- yamada_hana_narration_30s_20260903.mp3
- entry1234_yamada_hana_serif01.mp3
指定がなければ、文字化けを避けるために半角英数字とアンダースコアを使います。
「voice.mp3」「ボイスサンプル最終版2.mp3」など、誰の音声なのか分かりにくい名前は避けましょう。応募番号やファイル名のルールが指定されている場合は、その指示を優先してください。
ボイスサンプル提出前のチェックリスト

提出前は、編集画面の音声ではなく、実際に提出するファイルを開いて確認します。
パソコンでは問題なく聞こえても、スマートフォンでは声が小さく感じられることがあります。できればイヤホン、パソコン、スマートフォンなど、複数の環境で再生しましょう。
- 指定原稿、制限時間、ファイル形式を確認した
- ファイル容量と提出本数を確認した
- 名乗りが必要か確認した
- 最も聞いてほしい原稿を前半に入れた
- 原稿ごとの声や役柄に違いがある
- 冒頭や語尾が途中で切れていない
- 大きな声でも音割れしていない
- エアコン、車、PCファンなどの音が目立たない
- 部屋の反響や不自然なノイズ除去が目立たない
- 原稿ごとの音量差が大きすぎない
- 許可のないBGMや効果音を使用していない
- 原稿の著作権や利用条件を確認した
- ファイル名に氏名と内容が入っている
- 書き出したファイルを最初から最後まで再生した
- イヤホンとスマートフォンの両方で聞いた
- 共有リンクを使う場合は閲覧権限を確認した
- 提出先と添付ファイルを再確認した
クラウドストレージのURLを送る場合は、ログインしていない状態でも開けるか確認してください。ファイルを差し替えたあとは、古いデータのままになっていないかも再確認しましょう。
ボイスサンプルの作り方でよくある質問

ボイスサンプルはどのくらい編集してもいい?
聞き取りにくいノイズの除去、不要な無音のカット、原稿ごとの音量調整などは問題ありません。ただし、声質が大きく変わるほどEQやコンプレッサーをかけると、実際の声が伝わりにくくなります。元の声や息遣いが自然に残る範囲で調整しましょう。
録音は何回やり直してもいい?
一発で完成させる必要はありません。同じ原稿を複数回録音し、後から聞き比べて選びましょう。ただし、短い単語ごとにつなぎ合わせると、話し方や息の流れが不自然になることがあります。できるだけ文章や段落単位で収録するのがおすすめです。
ボイスサンプルにBGMや効果音を入れてもいい?
提出先から指定がなければ、声だけで仕上げるのが無難です。BGMや効果音が大きいと、演技や声質を確認しにくくなります。また、使用する音源によっては著作権上の問題が発生する可能性があります。BGMを使用する場合は、商用利用、Web掲載、編集、クレジット表記などの条件まで確認してください。
小説やアニメのセリフをボイスサンプルに使ってもいい?
公開されている作品でも、原稿を自由に録音・掲載できるとは限りません。基本的には、自作原稿、応募先から配布された課題原稿、利用許諾を確認できる原稿を使いましょう。練習として読む場合と、営業用のボイスサンプルとしてWeb上に公開する場合では利用方法が異なります。既存作品を使いたい場合は、権利者が認めている利用範囲を事前に確認してください。
文化庁も、著作物は許諾された利用方法や条件の範囲内で利用する必要があり、Webへの掲載には別途確認が必要になる場合があると説明しています。
自宅録音とスタジオ録音のどちらがいい?
静かで反響の少ない環境を用意できるなら、自宅でもボイスサンプルを作成できます。今後、宅録案件へ応募したい場合は、自分で録音や編集を行う練習にもなります。自宅ではノイズや反響を抑えられない場合や、事務所プロフィールなど長く使用する音声を作る場合は、スタジオ録音も検討しましょう。自宅で原稿や演技を練習し、本番だけスタジオで収録すると、収録時間や費用を抑えやすくなります。
自宅での録音・編集を基礎から学びたい方へ

ボイスサンプルを自分で作ろうとしても、「どのマイクを選べばいいのか分からない」「部屋の反響やノイズをうまく抑えられない」「編集すると声が不自然になってしまう」と悩むことがあります。
録音や編集は、使っている機材だけでなく、部屋の環境やマイクとの距離、録音ソフトの設定によっても仕上がりが変わります。自分の音声だけを聞いて原因を見つけるのが難しい場合は、講師に確認してもらいながら整えていく方法もあります。
Voice Campの「宅録/ナレーター講座」では、宅録が初めての方を対象に、機材の基礎知識から録音・編集・納品までを完全オンラインのマンツーマンレッスンで学べます。

レッスンでは、以下のような内容を扱います。
- 自分に合ったマイクや機材の選び方
- 自宅でのノイズ・反響対策
- マイクとの距離や角度
- 音割れやリップノイズを防ぐ録音方法
- ナレーションや朗読の収録
- ノイズ除去や音量調整
- EQ・コンプレッサーの基本
- WAV・MP3の書き出し
- 収録データの整理と納品方法
「まずはボイスサンプルをきれいに録れるようになりたい」「将来的に宅録声優やナレーターとして仕事を受けたい」という方は、宅録に必要な知識を基礎から学んでみてください。30分の無料体験レッスンもオンラインで受講できます。
まとめ|用途に合ったボイスサンプルを作ろう

ボイスサンプルを作るときは、最初に「誰に、どのような仕事のために聞いてもらうのか」を決めましょう。
短い応募用なら30秒、異なる表現を聞かせるなら60秒、複数の原稿をまとめるなら90秒というように、用途に合わせて構成を選びます。ただし、提出先から指定がある場合は、募集要項を最優先してください。
原稿は声色だけで選ばず、自分が任せてもらいたい役や仕事を想像して選ぶのがポイントです。録音後は音割れやノイズだけでなく、ファイル形式、音量、ファイル名、正常に再生できるかまで確認しましょう。
最初から完璧な1本を目指さなくても大丈夫です。まずは得意な原稿を30秒録り、聞き直しながら少しずつ自分の強みが伝わる形へ整えていきましょう。


